新年おめでとういございます。
本年もよろしくおねがいします。
今年の年賀状には「替天行道」と記しました。昨年暮れkindle PaperWhiteが届き、とりあえず読み始めたのが北方謙三「水滸伝」全19巻でした。以前からこのシリーズには注目していましたが、なにせ19巻というボリューム、なかなか手が出ませんでした。ところがeブックリーダーを入手してみてあらためてそのメリットを考えてみると、まずリアル・ブックにはないそのスペースファクターということになります。とにかく「一台に1000冊の本を収納できる!」のですからこれはありがたいわけで、特に「水滸伝」のような長尺物を気軽に持ち運べるようになり、さっそく試しに読み始めたというわけです。
ところがこの「水滸伝」作中に頻繁に登場するのが「替天行道」。その意味をめぐって複数の解釈があるようですが、北方「水滸伝」では梁山泊叛徒たちの革命思想スローガンのように用いられています。そのあたりを考えているうちに、10年ほど前、私たちに近い場所で扇情的に呼号されていた「ITが医療を変える!eヘルス革命!」などという文言を思い出しました。10年たってみると、これらの文言は単に空虚なばかりか、どことなく寒々しい響きさえ感じさせます。
この「ITが医療を変える!eヘルス革命!」というフレーズで、たとえば「IT」を「SNS」とか「ソーシャルメディア」に、「eヘルス」を「Health2.0」と言い換えてみると、一応、今でも通用するような体裁の文言にはなります。ですが、今からさらに10年後を想起してみると、たとえ「SNSが医療を変える!Health2.0革命!」などと言ったところで、やはり空しく寒々しいものになっているであろうことは容易に推察できるでしょう。
特に医療をめぐっては、これまでさまざまな人々が「医療を変える」ということを異口同音に叫んでいたと思います。しかしそれらは荒野をさまよう木霊のように、何の実体も伴うことなく、いつしか現実世界の強風に吹き飛ばされて消失していったのです。いったいこれらをどう解釈すればよいのでしょうか。
昨年あたりから、過熱気味の「ソーシャルメディア」ブームに対する違和感の表白が、すでにウェブのあちこちで目につくようになってきました。そろそろ「ソーシャルメディアの次に来るもの」に想いを馳せる時期かもしれませんが、それにしても流行現象の栄枯盛衰に一喜一憂するのも空しい所作ではありませんか。もっと持続力のある「何か」を見つけ出す必要があるのかもしれません。おそらく、もっと長持ちする「ビジョン」をこそ創案すべきなのでしょう。
「医療を変える」とか「××革命」とかいうclichéから抜け出し、なおかつそれらの発想と決別し、自分の言葉で医療ビジョンを語らねば・・・・。そんなことを考えさせてくれた「替天行道」でした。
三宅 啓 INITIATIVE INC.