もともとTOBYOプロジェクトはシンプルなサービスを目指してきたと思う。いや、最初から積極的に目指してきたというよりは、むしろ結果としてそうなったと言った方が正しいのだろう。そして、このシンプルさに今後もこだわりたいと考えている。特定分野にシンプルに特化し、シンプルな機能を実現するツールであり続けたいと考えている。
中途半端な拡張より、愚直なシンプルさの方が強いに決まっている。あれもこれもと戦線を拡張するたびに、要所の手当ては薄くなり、全体としての脆弱性は増すだろう。たとえばコンテンツだが、TOBYOプロジェクトはコンテンツを作らない。コンテンツはユーザーが自分の好きなところで作ればよい。
そのように考えてくると、現在着手しているDFC(Direct From Consumer)商品化もコンテンツを制作するのではなく、ユーザーにデータへのアクセスを提供するツールであるべきだ。つまりDFCはインターフェースとフィルタリングが肝であり、データの分析や解釈はユーザーに任せるべきなのだ。ここが重要だ。そして、やはりシンプルなツールに徹するべきだろう。
TOBYO本体がそうであるように、シンプルなツールでありながら、多様なユーザーの多様なニーズに対応できることが重要なのだ。シンプルなツールであることによって、複雑な問題解決に寄与できる。そのような方向性が好ましいと考えている。
DFCは医薬品、医療機関、治療法などを闘病体験から可視化するツールであるが、様々なエキスパートの専門的見地から柔軟に使えるようなものでなければならない。あらかじめユーザーニーズを想定したコンテンツを用意するのではなく、むしろユーザーの多様な目的に臨機応変に対応できるようなツールであるべきだ。
特定の医薬品ごとにDFCレポートを作成し、それらレポート群を集積したDFCライブラリーを作るというのがこれまでのDFC事業イメージだったが、DFCレポートすなわちコンテンツを制作するという方向を修正しなければならない。最終的にめざすべきはコンテンツを提供することではなく、機能を実現するツールを提供することなのだ。
三宅 啓 INITIATIVE INC.