ヴァーチャル・ドクター?、FreeMD

freeMD

ウェブ上のヴァーチャル・ドクターによるヴァーチャル診察、FreeMD 。こういうサービスって、「ありそう」なんだけれど、なぜか今まで実際にお目にかかったことはなかった。あまりにも「直球」すぎて、かえって誰もまともに実現しようとはしなかった、ということかもしれない。その意味で、実際に「直球アイデア」を作ってしまったこと自体、たぶん「すごいコト」なのだろう。おそらく・・・・。

使い方はいたってシンプル。症状や徴候を入力すると、一般的な医療情報を読むか、それとも「ヴァーチャル・ドクター」氏直々の「ヴァーチャル診断」を受けるかを選択できる。もちろんこのFreeMDの売りは「ヴァーチャル・ドクター」であるから「先生」のご登場を願うと、年齢、性別をはじめ「先生」が動画音声付で様々に質問してくる。いくつか質問に答えると最後に「診断」が出る。正確に言うとこれはもちろん正式の「診断」ではなく、あくまでも「アドバイス」ということのようだ。当方がテストしてみたケース(「咳」を症状として入力)では、最後に次のようなアドバイスを頂戴した。

あなたの症状は、いくつか複数の病気が原因である可能性がある。下記に私が最も心配する病気をリストしておいた。

・重度の呼吸困難

という具合にこのサービスは、単に文字情報だけでなく、よりリアルに近いユーザーとのコミュニケーションを動画と音声で提供しようとしているわけである。ちなみに、登場しているヴァーチャル・ドクターは本物の医師で、このサイトを運営するDSHI社の社長でもあるステファン・シューラー医師。このサービス・アイデアをかなり以前から温めていたようである。また、およそ3000ケースの症例について分析可能なプログラムを開発したとのことらしい。

しかし、このFreeMDを試用してみての率直な感想は、「何か、根本的に間違えてるんじゃないの?」ということだった。症状から可能性のある病気をアドバイスするツールということなら、これまで掃いて捨てるほどあるわけで、このFreeMDもそれらアドバイス・ツールを超えるものではない。それを「ヴァーチャル・ドクター」で差別化しようという意図はわかるが、そこで開発の方向性を間違えてしまったと思うのだ。

ウェブ世界のみならずPCソフトなどにおいても、われわれはリアル世界のアナロジーやメタファーをよく使う。だがそこを勘違いする場合も多い。アナロジーやメタファーは抽象的な概念や機能をよりわかりやすく理解するために使うのであり、リアル世界そのものの忠実な再現を意図するものではない。そもそも、ウェブで「リアル」を再現する必要などまったくない。だが、それでもなお「リアル」の忠実再現や「ホンモノ性」を謳うサービスがあるとすれば、それはユーザー価値とは無縁な「ウザイ過剰性」としか見てもらえないはずなのだ。

「ヴァーチャル・ドクター」が「直球アイデア」であるということは、実はそのような意味合いを含んでいるのである。だから、あえて誰もやろうとはしなかったのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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