11月6日、ニューヨークの医療&製薬市場マーケティング調査会社であるマンハッタンリサーチ社は、調査レポート”Cybercitizen Health v8.0″を発表し、2002年以来米国におけるHealth2.0ユーザーは倍増し、現在6000万人に達していると報告している。このHealth2.0ユーザーだが、マンハッタンリサーチ社では以下のような消費者のことを指している。
・過去12カ月間に以下の行動のうち少なくとも一つを実行した者
- 医療関連のブログや掲示板を読む。医療関連チャットルームに参加する。
- 医療関連ブログを書く、コメントを付ける
- 医療関連フォーラムにトピックを付ける
- 医療関連ウェブページ、ビデオ、音声コンテンツを制作する
- オンライン患者支援団体の掲示板、チャットルーム、ブログを利用する
このレポートでは、浸透著しいHealth2.0の一つの注目すべき動向として「ニッチ・セラピー」というトレンドを取り上げている。これはウェブ技術によって初めて可能になるが、「マスメディア・キャンペーンは、広範囲の人々に関連する症状の認知を上げることには成功したが、一方、たとえばニッチな薬剤は正確なターゲティングと患者とのワン-トゥ-ワンの関係の育成を要求する」とした上で、後者において特化型ソーシャルメディア、検索マーケティング、行動ターゲティングが活用されるべきだと指摘している。
「ソーシャルメディアは、消費者のインターネットを使った医療情報の集め方を変えつつあるのだ。患者やケアギバーはもはや静的な立場に限定されることなく、オンラインでアドバイスや治療体験を今や共有しているのだ。」とマンハッタンリサーチ社VPであるMeredith Abreu氏は述べている。
またこの調査レポートは、Health2.0ユーザー属性を考える際、性・年齢などデモグラフィック属性だけが重要なのではなく、むしろ病気や症状などの属性が考慮されるべきだという注目すべき主張をしている。たとえばネットに習熟した若者だけでなく、がん、線維筋痛症、うつ病などの患者もまた熱心なHealth2.0ユーザーなのだ。「Health2.0という出来事は、医療産業でこれまで行われてきた事のやり方を変えようとしているのだ」とMeredith Abreu氏は結び、製薬企業などに新しいマーケティングの必要性を説いている。
いずれにせよこの調査レポートによって、Health2.0が医療産業にとっての重要なマーケティング機会であるとの認識が、ようやくデータに基づいて出てきたわけだ。素直に喜びたい。レポートにも少し触れられているが、今後、たとえば製薬メーカーによる患者SNSサービスやアルファ患者ブロガーの闘病サイトへの広告出稿のような、「ニッチセラピー」対応型のHealth2.0マーケティングが活発に展開されると思われる。そしてこのようなHealth2.0マーケティングとの連携と接続が、Health2.0ベンチャー企業のビジネスモデル成立には不可欠であるはずだ。状況は徐々に動き始めている。
<参考>
・“Number of US Health 2.0 Consumers Now at 60 Million”
・“Number of health 2.0 citizens doubles from last year”
三宅 啓 INITIATIVE INC.