患者ニーズについての覚書

先日、TOBYO収録闘病サイト件数が1万件に達したが、この収集およびチェック過程で多数の闘病ドキュメントに触れることができた。それぞれの闘病の事実経緯のみならず、現場の雰囲気など暗黙知を蓄積できたことは、当方にとって今後の大きな財産になると思う。

それらおびただしい量の闘病体験から、たしかに「患者ニーズの実像」というものが、明確に姿を現したと思える瞬間をたびたび経験したのである。それ以来、「実践的で役に立つ情報」という言い方をしばしばこのブログでもしているのだが、このことはTOBYOの方向性を修正するきっかけにもなった。

ウェブで医療情報サービスに携わる以上、医療情報や患者体験をはじめ「情報」を焦点化し、いかに高質な情報を効率的に提供するかを目的化せざるを得ないだろう。だが「患者ニーズの実像」という観点から見れば、これらは的を外している所作であるかもしれない。そこでは目的と手段の転倒が起きているからだ。当たり前のことを言うが、「患者ニーズの実像」とは、畢竟、「病気を治したい」という一点に尽きる。多数の闘病体験に触れる中で、あらためてこのことを強く再確認させられた。たしかに患者は情報を求めているが、その情報は「病気を治す」という目的のための手段という位置に立つ。

だが、自分たちは医療者ではない。直接、患者の病気を治すことはできない。だから手段としての情報を提供するしかない。そして「手段としての情報」は、手段にふさわしい実用性を備えていなければならないはずだ。つまり、実践的で実際に役に立つ情報でなければならないのだ。そのような観点から、今一度、提供医療情報を吟味してみること。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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