TOBYOは先週末ベータ版を公開したが、実際に使ってもらったユーザーの方から様々なご指摘をいただいている。ありがたいことである。今後、機能改善を細かく積み上げると同時に、各機能のわかりやすい説明に留意しなければならない。「できる限りシンプルなツールを作る」ことを目指したのだが、まだまだ改善の余地はある。当然、ユーザーのご意見、ご要望を指針として進めていくことになるが、これから継続的にTOBYOを改善していくために、ユーザーが直接参加できるような仕組みも検討したい。
ところで、TOBYOは「闘病ネットーワーク圏を可視化するツール」であるから、やはりバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」が中心的な機能となる。「TOBYO事典」はすべての対象検索サイトを全文検索できるのだが、そうすると闘病サイトに記録された「固有名詞の情報」が決定的に重要になってくる。この固有名詞を手がかりに、日本の医療現場で闘病者が体験している事実を、すべて克明に可視化できるようになるからだ。
だが、これまでのウェブ闘病記では病名にもよるのだが、総じて病院名、医師名など、固有名詞は伏せられるケースが多かったのである。「事実」から固有名詞をとってしまえば、それはもう事実ではなくなる。事実が本来持つ説得力や存在感が消失するからだ。あとには安全無害な「物語」だけが残されることになる。事実を事実とするためにも、固有名詞の明記が必要なのだ。その意味で今後、闘病記に固有名詞が多く登場することを期待したい。
従来、たしかに「固有名詞をもった事実」を探すのは非常に骨が折れた。「この病院で手術した人はどんな事実を体験したのか」という情報を探すためには、汎用検索エンジンの検索結果を何十ページもめくらなければならなかった。だが、TOBYO事典はすべての検索対象闘病サイトから、全文検索で固有名詞を拾い上げる力を持っている。固有名詞を元に「事実」を可視化することができる。
このことを、たとえば医療評価に活かすことができるだろう。これまで医療評価には統計的調査からクチコミ評価まで、さまざまな方法が模索されてきた。だが、日本では「闘病ネットワーク圏」という闘病体験の膨大な蓄積が既に存在している。この膨大な体験情報を活かせば、病院のレーティングをはじめ医師のレーティングに至る医療評価が簡単に実現される可能性もあるだろう。また医療界の側も、「自分達の病院が患者からどう評価されているか」などを調べるのに、どんどんTOBYO事典を使っていただきたい。
三宅 啓 INITIATIVE INC.