医療機関検索や医師検索はウェブ医療情報サービスとしておなじみの分野であるが、完全に同質化してしまっており、どこも似たり寄ったりのサイトばかりだという印象が強い。検索方法や結果提示の仕方など、もっと工夫がほしい分野である。
HealthWorldWebをローンチしたグループも、最初はそのような既存の医療機関・医師検索サイトに飽き足らず、検索オプションを増やしたり、ソーシャルブックマークなどの新機軸を打ち出したりして、新しい医療機関・医師検索サービスの創造を目指していたようだ。
「われわれがサイトを確立した時には、ウェブが変化していたのだ。静的なウェブページはユーザー志向コミュニティーに取って代わられつつあり、ユーザー個々に情報の受け取り方を構築させるようになって行ったのである。そこで、われわれはソーシャルネットワーキングを次の論理的ステップと見なした」。
時代は1.0から2.0へと突き進んでいた。その変化の方向性をしっかりと理解して、「どう変わらなければならないか」と問題を立てた彼らは賢明であった。ウェブ医療サービスにおいても、ユーザーにあてがいぶちで決まり切った機能を提供する時代は去ったにもかかわらず、相変わらず1.0的発想のサイトはまだまだ多い。
HealthWorldWebはこの九月から、ユーザーが自由にコミュニティを創り出せるSNS機能を付加し、改めてローンチしなおした。これによってHealthWorldWebは、医療機関検索とSNS機能を併せ持ち、さらに他の2.0機能をも付加した「総合的患者プラットフォーム」、あるいは「医療の意思決定プラットフォーム」とでも呼ぶべきサイトへと変身したのである。HealthWorldWebのCEOダン・コーガン氏は、このことを次のように述べている。
「このサイトは、フェースブックとシティサーチを足して二で割ったような医療特化型サイトだ。前者(フェースブック)のように、ユーザーは自分のコミュニティを作れるし、後者(シティサーチ)のように、ユーザーの住む地域の医療機関や医師を検索することができる。そしてそれらの情報を他の人と共有することができる」。
このようにHealthWorldWebは、検索サイトから、患者が自由に情報を操作するためのツール提供サイトへと方向転換したのだが、このことは結果的に、従来の検索サイトと患者SNSの双方に対する差別化を生みだすことにもなっている。
考えてみると、「患者体験」とは本来、具体性に満ちた医療情報であるはずだ。それは、「いつ、どこで、だれに、どんな治療を受けたか、どんな薬を処方されたか、その結果はどうだったか」というように、常に具体的な固有名詞によって支えられ特定される情報という性格を持っている。そして言うまでもなく、特に患者が知りたいのは「どの病院、どの医師」という固有名詞情報である。
そのように考えると、患者体験共有機能と医療機関・医師検索機能が結びついているこのHealthWorldWebは、結果として「1+1=2」以上のシナジー効果を生み出す潜在力を持っているのかもしれない。しかしこのデザイン、なんとかならんものか。
三宅 啓 INITIATIVE INC.