Pfizer、Sermo提携の波紋

昨年9月にローンチした医師SNSのSermoは、一年足らずの間に米国ナンバーワン医師SNSのポジションを獲得したが、今回の製薬メーカーPfizerとの提携はHealth2.0コミュニティを越えて広く話題になっている。

Wall Street Journalは、Pfizerが今回パートナーシップ契約を結んだ背景を次のように解説している。

上位売上製品のいくつかが特許権保護を失うことによる財務プレッシャーに直面し、Pfizerはより効果的に薬剤を処方する医師にリーチする方法をさがしている。この提携のもとで、Pfizerに関連のある医師は、忌憚なくこのサイトの31,000人の会員と話すことができるようになる。このことは、この企業に処方パターンについての洞察を与え、薬剤のデータを医師に提示する道を与える可能性を秘めている。( “Pfizer-Doctors Web Pact May Get Looks”,,TheWall Street Journal,October 15, 2007, 以下同)

やはりPfizerにとっては、従来よりも効率的に医師にリーチする道を開拓し、医師とのコミュニケーションを改善する必要があった。とりわけ従来のセールス部隊は生産性が低く、コストドライバーになっていた。

Pfizerは、伝統的に業界で最強のセールス部隊を現場に配置してきたが、昨年、米国でセールス部隊の20%をレイオフし、今年1月にはヨーロッパでも20%以上のセールス部隊をレイオフした。

さらにこれら製薬メーカーのセールス部隊は、実は医師からも評判は悪かった。

SermoのCEOであるDaniel Palestrant氏は、最初、彼は製薬メーカーには参加してほしくないと考えていたと言っている。しかし、サイトで医師たちが、彼らのもとへセールス要員を送ってくるよりは、もっと便利なメディアで製薬業界とコミュニケーションしたいと要求し始めたのを見て、考えを変えたとのことである。

そして前回エントリーで、FDAとの連携をPfizerがアナウンスしているのを、当方は奇異に受け止めたのだが、WallStreetJournalでは次のような事情を報じている。

だがPfizerにとってこれはリスキーな領域である。製薬業界と医師の交流は、規制当局と立法者によって非常に注意深く監視されているのだ。その監視の対象となるのは、販売促進のためか、あるいは認められていない薬剤の使用方法を促進させるために、金銭的なインセンティブを提供することである。PfizerはこのパートナーシップについてFDAと協議していくつもりである。

一方Sermo会員医師たちの中には、この提携に警戒気味の人たちもいる。

「製薬会社と密接な関係があるとみなされると、たびたび他の医師から悪く見られることがあった。」とPfizerの参加を概して歓迎しながらも、Sermoメンバーで耳鼻咽喉科の医師Richard Thrasher氏は述べている。

「このことをするためにはPfizerは大きな勇気が必要だったろう。なぜなら(サイトの)反応はいつもポジティブであるとは限らないからだ」。SermoのPalestrant氏は言う。「 製薬業は常に危機にある。常に何らかの非難を受けている。そして医師との信頼問題というものも、ずっとあったのだ」。

よく指摘されることだが、製薬業界の米国社会でのイメージは悪い。「製薬業界と提携する」ということ自体が、医療者にとって良いイメージを持たれてはいないのだ。

Pfizerの上級副社長Michael Berelowitz氏は、Pfizerはリスクにかかわらず、よりオープンなコミュニケーションを望んでいると言う。「われわれは常時厳しく監視されており、われわれが何を、いかに言うかについて、常に抑制しなければならない、そんな環境に住んでいる。もしこのような種類のメディアが前進するとしたら、われわれはそこでいかにふるまうべきかを学ばねばならない」

以上、TheWall Street Journalビデオニュースもご参照されたし。

Source:”Pfizer-Doctors Web Pact May Get Looks”,TheWall Street Journal,October 15, 2007

<関連情報>

巨大製薬企業と医師SNSの提携 

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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