YouTubeで患者体験を共有する

SiCKO

米国医療制度をテーマにしたマイケル・ムーア監督の異色ドキュメント映画「SiCKO」が話題になっているが、同時に、ムーア監督は「ひどい医療体験を共有しよう」と呼びかけ、YouTubeで患者体験ビデオ共有コミュニティを立ち上げた。

「マイケルはYouTubeのメンバーに、ひどい医療体験を共有すること、そしてあなたが医療保険会社で経験したことを伝えてもらいたいと考えている」と記されたYouTube「SiCKO:ひどい医療体験を共有しよう」コミュニティ・ページは、ある意味では映画「SiCKO」プロモーション活動の一環と見ることも出来るが、患者体験情報を共有する新しい手法としても注目される。現在、同コミュニティには60本を越えるビデオがアップされ、登録メンバーは800人を越え、ディスカッションボードも設置されている。

医療業界のYouTube利用については、これまで教育ツールとしての事例等があったが、患者体験を共有する試みとしては、これが初めてではないだろうか。闘病記サイトにも、これまで自分の手術映像などを公開する例はあったが、今後はYouTubeなどビデオ共有サービスを利用して、手軽に自分の患者体験をビデオ配信する例が増えてくるかも知れない。

患者によっては病状等の制約から、PCでキイボード入力することが難しいケースもあるだろう。その際、自分の体験メッセージをビデオで記録・公開する方法もあり得る。かつて寺山修司は生前、ビデオ日記を自分で毎日収録していたが、当時よりも機器と伝送手段のコストも、利用技術のハードルも格段に下がっているのである。今日では、誰もがITの恩恵を闘病活動に活かすことができるようになった。

闘病記のモチベーションというものは、個人によって千差万別だろう。だが、それを不特定多数に向けて公開するという行為、Webで公開するという行動は、「患者デジタルコモンズ」の質的量的価値増大に貢献することに違いない。

Health2.0の定義をめぐって様々な議論はあるが、結局、Web上にこのような患者デジタルコモンズを含む「医療デジタルコモンズ」を、いかに豊かに、オープンに、利用しやすい形で協働して作り上げるか、ということではないかと最近考えている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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