昨日、Googleのアダム・ボスワース氏の発言について紹介し検討を加えてみました。このボスワース氏のエントリー、米国ではかなり話題になっているようです。今日もある医療系ニュースサイトで、早速このエントリーに関して「Google Health、近日登場か?」という見出しの記事が出ていました。
「Google Health」については、ちょうど一年前の今頃だったと記憶していますが、米国で「Google Health、今月発表!」と大手新聞社が報じていました。いまだに、何かGoogleが医療分野でアクションを起こす気配を見せると、すぐに「Google Health」と結び付けられるようで、ある意味、いかにWeb医療情報サービスにおいてGoogleの本格登場が待ち望まれているかが分かります。
これは逆に言えば、現在の医療情報サービス・シーンが貧弱で、あまりユーザーから評価されていないということを物語っているのかも知れません。しかし、それでもWeb2.0の刺激を受けて、新しいWeb医療情報提供ムーブメントも少ないながら出てきています。
「Health2.0」と言う言葉を聞いたのは、たしか昨年暮れ頃でした。それについての論争のことも、年末のエントリーで触れました。その後、このHealth2.0をめぐる動きがどうなっているかウォッチングしていますが、運動量も影響力もまだ小さいながら、着実に前進しているように見えます。ただ、これは昨日のアダム・ボスワース氏もそうでしたが、やはり「Web2.0の医療への適用」という単純な話ではすまないのであり、医療そのものを、新しい観点で根本から問い直す作業が必要になっているかのような印象を持ちます。
一方、最近”Value-Based Competition”(価値に基づく競争)など、ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・E・ポーターがベストセラー「Redefining Health Care」で提起している考え方が、米国政府の基本的な医療政策にも影響を持ち始めているようです。
Principles of value-based competition
・The focus should be on value for patients, not just lowering costs.
・Competition must be based on results.
・ Competition should center on medical conditions over the full cycle of care.
・ High-quality care should be less costly.
・Value must be driven by provider experience, scale, and learning at the medical condition level.
・ Competition should be regional and national, not just local.
・Results information to support value-based competition must be widely available.
・Innovations that increase value must be strongly rewarded.
以上がポーターが唱えるプリンシプルですが、このポーターように経済、経営、マーケティングなど、医療にとっての「外部」から医療再定義、再検討の論考が活発に出てきていることは評価できます。
そして、前述したように、この「外部からの医療の再検討」はアダム・ボスワースやHealth2.0ムーブメントにも共通するものです。医療が狭い医療業界や医療アカデミズムの内部だけで論じられる時代は去り、これからは他分野など「外部」から、従来にない視点で医療が論じられていくことになるのではないでしょうか。われわれも、その流れに参加していければと考えています。
三宅 啓 INITIATIVE INC.