闘病サイトのライフサイクル

TOBYOでは、引き続き闘病サイト情報を収集している。現在、約12,500件の闘病サイト情報を公開しているが、この中身を見ると、これらサイトは決して不動のものではなく、実は流動的である。闘病サイトは永遠不滅なものではない。闘病ネットワーク圏を観察していると、どんどん新しい闘病サイトが登場する一方、ひっそり閉鎖され消えていくものも多いことに気づく。

何もない空間(ネット上)に、突然、ポッと光が現われ、明滅を始め、やがて消えていく。

私が闘病サイトを観察しているうちに抱いたイメージはそのようなものである。かつて闘病ネットワーク圏のことを宇宙にたとえたことがあるが、それは闘病ネットワーク圏を構成する闘病サイト群が、全体としてまるで宇宙に散在する銀河、星雲、恒星のように見えたからだ。個々の闘病サイトは出現しては消滅している。これについては「宇宙=量子論的な真空」を想起する必要があるのかもしれない。 続きを読む

米国医師SNSの現状

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米国マンハッタンリサーチ社が医師と情報技術に関する調査レポートを発表したが、その中で医師SNSの現状に触れているのが注目される。

同レポートによれば「医師SNSに参加しているか興味を持つ」と答えた医師は60%であり、後の40%は「興味がない」としている。また、既に医師SNSに参加している医師プロフィールの傾向として、同レポートは次のように報告している。

  • プライマリケアの医師
  • 女性
  • PDAか携帯電話を所有
  • 診療中あるいは診療の合間にオンライン接続
  • 医師平均年齢よりもやや若い層

以上の中で、「女性」が医師SNSの中心メンバーであるとの結果に特に注目が集まっている。これは従来まったく知られていなかっただけに、その原因について、さまざまな仮説が出されているようだ。 続きを読む

書評:「ネットで暴走する医師たち」鳥集徹、WAVE出版

本書はいろんな意味で「話題の書」になっているらしい。当方は以前、ネット医師とか医師ブロガーと称される方々のブログをかなり集中して読んでいた時期がある。現状医療制度に対する、医師たちの本音や考え方をブログから把握したいと考えていたからだ。ところがいつのまにやら、継続して読む医師ブログはなくなってしまった。別に積極的な理由はないが、これら医師ブログは広い読者層を想定しているようには見えず、狭い医師社会内部の「内輪話」に終始しているように感じたからだ。また、どうやらマスコミを敵視する点で、これらの医師ブログは共通しているようだが、たとえば頻繁に新聞記事を引用し、その一言一句を重箱の隅をほじくるような執拗さであげつらうその”stickiness”に辟易したためでもある。

米国やヨーロッパの医師ブログは数多く読むが、日本と違うのはそれらすべてが実名で書かれている点だ。日本では実名の医師ブログは圧倒的に少ない。海外では医師のみならず、プロフェッショナルな専門職を持つ人ほど実名でブログを書いている。匿名で書くのは自由だが、匿名ゆえの気楽さは、時として自律性を欠いた言論へと暴走することもあるだろう。本書のテーマはそこにある。 続きを読む

Depression is going on

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日本の某宰相の国会答弁は、最近その「ぶれ」っぱなしの迷走ぶりが顕著だが、英国ではブラウン首相の「言い間違え」答弁が物議を醸している。

「世界は恐慌」。英国のブラウン首相が4日、国会でこう口を滑らせた。恐慌(depression)は景気後退(recession)より深刻な長期不況を指す。失業者が急増した1930年代の世界大恐慌を連想させ、企業や個人の景況感にも影響を及ぼしかねないため、首相官邸は「言い間違え」と釈明に躍起になっている。
野党・保守党のキャメロン党首との論戦中に「我々は“恐慌”脱出に向け世界全体で金融・財政政策に合意すべきだ」と発言した。「我々の知らない(恐慌の)兆候があるのか」とすかさず野党が追及し、後で首相報道官が「景気後退と言うつもりだった」と訂正するドタバタになった。(日経090204

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PracticeFusion社の衝撃

先日、NTTPCコミュニケーションズが医療情報サービス企業と組み、診療所向けにEMR(電子カルテ)システムをSaaS(Software as a Service)で提供するとの記事を読んだ。全国約9万件の診療所は、病院のような大規模なEMRを必要としないので、SaaSベースのEMRシステム提供は今後増えるだろう。しかしこの記事を読んで思い出したのは、PracticeFusion社の無料EMRシステムのことである。

米国では最近、改めて「Disruptive Innovation」(破壊的イノベーション)を実現したと同社を評価する声が高まっているが、たしかにPracticeFusionが医療IT市場に与えたインパクトは大きい。何といっても「無料」のEMRである。以前のエントリでも取り上げたことがあるが、従来、既存ベンダが提供する診療所向けEMR価格(初期投資)はおよそ2万ドル。さらにメンテナンスやアップグレードの費用が加算され、医師個人にとって負担は大きく、結局、導入コストがEMR普及の足を引っ張る要因であった。 続きを読む