TOBYOプロジェクトは「闘病体験データの社会的活用についての考察」にも述べたように、「消費者、医療界、医療関連業界」の三方向へ向け、闘病体験データを提供していくことになるが、特に医療関連業界へ向けたデータおよびサービスについて「マーケティング」という一般的な言い方をしてきた。この点については、たとえば「患者体験マーケティング」とか「闘病マーケティング」など、一般的でないもっとTOBYOプロジェクトを体現するような言い方はないものかと、実はあれこれ思案していたのである。
ところが先週、あるブログのエントリに、まさに当方が探しているものが提示されていたので本当に驚いた。
製薬会社の社員は自分が売っている商品を自身で使うことがまずない。使ってみてどうなのかという情報は、ユーザーからではなく、主に医師というフィルターを通して収集せざるを得ない。もちろん医師を通すことによってノイズが減るという利点もあるのだが、医師が把握していない患者の経験や感触はヤマほどあるはずで、そうした今まで「ブラックボックス」だった”肌感覚の情報”がたくさん詰まっているという意味でUGCは宝の山なのだ。
例えば、「先生からはAという強いお薬も出されたが、黄色いドギツい色をしているし胃腸への副作用も怖いので結局飲むのはやめてしまった」なんていう話は先生の耳には伝わらないものだ。
ここ数年、製薬業界では「DTC (Direct to Consumerの略。消費者に対し製薬会社が直接的にマーケティングメッセージを届けること)」が流行りであったが、UGCの充実が進むにつれ、「DFC(Direct from Consumerの略。本ブログ筆者の造語)」に力点が置かれるようになるのではなかろうか。
「UGCがもたらす変化~DTCからDFCへ~」 株式会社メディカル・インサイトの社長日記
的確な指摘だが、この「DFC」(Direct from Consumer)こそが、TOBYOプロジェクトが提供していくサービスを言い切るコンセプトであると教えられた。この「DFC」というコンセプトによって、いままでぼんやりしていたことが明確化され、進むべき方向が視界良好となり、TOBYOプロジェクトは大きく前進することができたと思う。鈴木さんに感謝。
今後は「マーケティング」一般ではなく、「DFCマーケティング」を社会に向け提案していくつもりである。
ところでこのブログの作者である鈴木さんだが、先月からTOBYOプロジェクトに参画していただくことになった。鈴木さんはダートマス大学MBA、ボストン・コンサルティング・グループ、ヤンセンファーマを経て、昨年、株式会社メディカル・インサイトを起業された。昨年末から当方と何度かディスカッションしてきたが、医療に対する問題意識を共有できると強く感じた。今後のコラボレーションが楽しみである。
※TOBYOは、できるだけオープンなプロジェクトであることをめざしています。さまざまな方々のご参画をお待ちしています。ご一報ください。
三宅 啓 INITIATIVE INC.