日本の某宰相の国会答弁は、最近その「ぶれ」っぱなしの迷走ぶりが顕著だが、英国ではブラウン首相の「言い間違え」答弁が物議を醸している。
「世界は恐慌」。英国のブラウン首相が4日、国会でこう口を滑らせた。恐慌(depression)は景気後退(recession)より深刻な長期不況を指す。失業者が急増した1930年代の世界大恐慌を連想させ、企業や個人の景況感にも影響を及ぼしかねないため、首相官邸は「言い間違え」と釈明に躍起になっている。
野党・保守党のキャメロン党首との論戦中に「我々は“恐慌”脱出に向け世界全体で金融・財政政策に合意すべきだ」と発言した。「我々の知らない(恐慌の)兆候があるのか」とすかさず野党が追及し、後で首相報道官が「景気後退と言うつもりだった」と訂正するドタバタになった。(日経090204)
これを読んで逆に、現下の世界経済危機をdepression(恐慌)と言ってなぜ悪いのだろうかと首をひねったのだが、そこは人心に与える影響甚大ゆえの配慮か。ところで「depression」という言葉には、「恐慌」の他に「うつ病」という意味がある。たまたま、TOBYO収録の「うつ病」闘病サイトがとうとう1000件に達したこともあり、当方など、この記事からただちに「うつ病」のことが想起された次第である。「なるほど、『恐慌』とは『経済のうつ病』のことか」と。
とすれば、逆にバブル期を「経済の躁状態」と考えることもでき、経済の景気循環を「躁とうつ」の循環と捉えることもできる。つまり、人間の経済活動は、人間の「躁うつ病」のような病理から逃れることができないということか。
ここまで考えて、次に思い出したのが「Manic Depression」(躁うつ病)と題されたジミ・ヘンドリクスの作品だ。
躁うつ病が俺の魂をつかんだ
何が欲しいかはわかっているが、
どうやって手に入れるかがわからないんだ
気持ち、快い気持ちが
指、俺の指からこぼれ落ちていく
躁うつ病が俺の魂をつかんだ
(”Manic Depression”, Jimi Hendrix)
今日の「恐慌的危機」にあってこのジミヘンの楽曲は、妙に生々しいリアリティを獲得して耳に聞こえてくる。「荒ぶる」としか形容しがたい彼の激しい演奏は、下記YouTubeで体験されよ。
参考:YouTube:「Manic Depression」
三宅 啓 INITIATIVE INC.