Health2.0ビジネスを加速する「Health2.0 Accelerator」

Health2.0Accel

昨秋、サンフランシスコで開催された第一回Health2.0コンファレンスにおいて、実は地味であまり目立たなかったのだが、一つ非常に興味深い提案があった。それはHealth2.0を一過性のブームに終わらせることなく、確実に成果を生み出すビジネス領域へと早急に育成するために、アクセラレーター(加速器)のような組織を作ってはどうかという提案であった。

そしてこのビジョンを提案したのが、かつてインターネット黎明期に「CommerceNet」(1994)を設立し、e-コマース発展の触媒として大きな役割を果たしたといわれるMarty Tenenbaum氏である。ちなみに、初期のCommerceNetメンバーには、ネットスケープ、ヤフー、そしてアマゾンなど後に急成長する錚々たる企業が名を連ねていたが、これらも当時は駆け出しのスタートアップ企業にすぎなかったのである。CommerceNetは、これらスタートアップ企業が成長するためのいわばビジネス・インフラ整備を進め、ウェブ業界が巨大な産業分野に成長することに寄与したのである。

さて、昨年のHealth2.0コンファレンスに登場したMarty Tenenbaum氏は、Health2.0の現状をインターネット黎明期の状況になぞらえ、Health2.0を順調に育成するために、かつてCommerceNetが果たしたような役割を持つ組織の必要性を説いたのである。それはその時「Health2.0 Accelerator」との仮称で呼ばれたのだが、ようやく今月になってその公式ウェブサイト が公開された。

非常におもしろい、興味深い組織である。日本なら、さしずめ「業界団体」みたいなものを作ってしまうのだろうが、どうやらそれとはちがう。また業界規準の「標準化団体」みたいなものでもないようだ。まだ全貌がはっきりしないが、とにかくMarty Tenenbaum氏の経験とノウハウが生かされることは間違いない。このことは、Health2.0の特にスタートアップ企業にとって心強い支援となるだろう。

さて、そういえば日本でも数年前に「eヘルス・コンソーシアム」という奇妙な動きがあったことが思い出される。もっともこっちのほうは、「Accelerator」とはまるで違って、最初に学者や役人の名前をずらずら並べるところから始めるような、まるで市場創造とは無縁の動きであった。結局、さしたる成果も挙げることなく終わったが、その残骸サイトがいまだに存続している。終わったものを今さら批判する気はないが、この「コンソーシアム」に唯一の成果があるとすれば、それは「何を、どのようにやっていはいけないか」を広く社会に示した点にあると思う。
まさに「Health2.0 Accelerator」とは対極に立つものと言える。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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